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マーガリン研究発表

大阪府立清水谷高等学校 受賞生徒
平成17年度 文部科学大臣賞受賞 大阪府立清水谷高等学校

マーガリンの秘密〜 めざせ健康生活 〜

「食い倒れの街、大阪」こう聞けば豊かな食生活をイメージしますが、果たして今の食の現状はわたしたちの健康や生活にとって望ましい状態なのでしょうか。今回の研究活動を通して、さまざまな角度から考えていきたいと思います。

実態調査

  1. 1.食生活実態アンケートの実施

    研究の基礎となるデータを収集するために、(1)食生活全般について (2)マーガリンや油の摂取について (3)地域の特産品や郷土料理について、の3つの角度から質問項目を考え、2年生280名の協力のもとにアンケートを実施しました。

    健康の源は食べることですが、その食べるということについて、わたしたちは無関心で、親に任せっぱなしにしています。このこともアンケートの結果から分かりました。

  2. 2.マーガリンについて(INET、文献検索)

    特に気になったことはトランス脂肪酸です。トランス脂肪酸は、90年代から心筋梗塞との因果関係があるのではないかと疑われ、米国では06年1月から危険物質として含有量表示が義務化されています。

  3. 3.マーガリン工場見学

    尼崎市にある油脂工場を見学しました。マーガリンについての講義では、マーガリンの長所と短所を知ることができました。簡易の器械を使ってマーガリンを手作りしたり、製パン実習をしました。

    トランス脂肪酸について質問したところ、「摂りすぎはいけない」が、「日本型食生活を心がけ、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸のバランスが取れた食事をしていれば大丈夫」との返事をいただきました。

    活動写真01
  4. 4.問題点の把握

    以上の実態調査の結果、研究の柱を次の3つに決めました。

    1. (1)

      マーガリンをはじめ、健康とのかかわりが深い、油脂の摂取方法について校内でPRし、食べることに関心を持ってもらう。

    2. (2)

      地元の食材を知り、その食べ方も含めて普及していく。また地元の食材とマーガリンを使った、新しい料理を研究する。

    3. (3)

      子どもの頃から望ましい食習慣を築いていけるように、幼稚園で食育活動に取り組ませていただく。

研究活動

  1. 1.スーパーマーケットでの市場調査

    調査から、マーガリンの種類と売れ筋や値段、消費者の商品選びの傾向が分かりました。

  2. 2.玉造黒門越瓜(たまつくりくろもんしろうり)食味祭(玉造稲荷神社)見学

    このお祭りでなにわ伝統野菜のひとつである、玉造黒門越瓜と清水谷周辺の縁の深さを初めて知り、マーガリンと玉造黒門越瓜を使った研究を進めていくことを決めました。

  3. 3.なにわ伝統野菜についての学習

    大阪府立食とみどりの総合技術センターの森下正博先生を学校にお招きし、「なにわ伝統野菜」についての講義をしていただきました。

  4. 4.「玉造黒門越瓜クッキー」に至る経緯

    越瓜の普及の鍵は、漬物以外の利用法を考え、幅広い年齢層に広めていくことです。そこでわたしたちは「玉造黒門越瓜クッキー」の研究を進めていくことに決めました。

    その頃、わたしたちの活動を知った、玉造黒門越瓜出隊(保存会)の方から、共同開発の誘いを受け、一緒に取り組むことにしました。

    こうしてわたしたちの越瓜クッキーは、新しい大阪土産として平成18年2月の店頭販売を目指した、「商品開発」という大きなプロジェクトになっていきました。

  5. 5.玉造黒門越瓜クッキーの商品化と普及に向けた試作

    加工品の原料として通年利用していくには旬が短い越瓜をどのように長期保存するかという問題があります。いろいろと検討した結果、わたしたちは越瓜をピューレ状にし、冷凍保存するという方法を選びました。

    次に越瓜の風味の良さを活かすにはどんな生地がよいのか、試作を繰り返しました。

    4回の試作と文化祭のアンケートの結果、越瓜のピューレを混ぜ込んだ基本の生地を決定しました。またトッピングとして瓜ジャムをのせて焼いたクッキーが、一番越瓜の風味とイメージが表現できると考えました。

    基本ベースが決定してからは、バターとマーガリンによる味や食感の違いの検討、フレーバーを変えての試作を繰り返しました。同時に普及活動を通して、多くの方々に試食と食味調査に協力していただくことにしました。

    活動写真02

普及活動

  1. 1.校内活動

    1. (1)

      文化祭で研究成果を発表
      越瓜クッキーの食味調査と、マーガリンについて・油脂の摂取と健康について・なにわ伝統野菜について等の展示を行いました。たくさんの方がアンケートに協力してくださり、熱心に展示を見てくださいました。

    2. (2)

      中学生体験入学での試作品の食味調査
      クルミ入りとココア味の2種類のフレーバーをマーガリンとバターで作り分け、中学生の味の好みや反応を探りました。

    3. (3)

      I&YOU食生活便りの発行
      月に一度、活動を通して学んだことを文章にまとめ、新聞として発行してきました。読んだ人からは、「知らなかったことがたくさんあっておもしろかった」という声がありました。

  2. 2.校外活動

    1. (1)

      玉造黒門越瓜クッキーの普及
      ・総合フェスタ2005参加
      ・なにわ伝統野菜復活フェスタ参加

    2. (2)

      地域交流会の開催

    3. (3)

      大阪市立味原幼稚園での食育活動

      3年生の家庭科選択者が、大阪市立味原幼稚園で食育活動を行いました。

      第1回(平成17年7月実施):
      子どもが野菜に関心を持ち、野菜を好きになることを願って、自分たちで野菜ゲームを考え、実施しました。
      学習会(平成17年9月実施):
      栄養アドバイザー八尾の方々をお招きし、実演を交えながら、幼児に食育をするときのさまざまなコツやヒントを教えていただきました。
      第2回(平成17年11月実施):
      『食べるの大好き元気っ子!』というペープサートを手作りし、栄養三色運動を行いました。
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まとめ

研究の成果

  • 1)

    マーガリンの秘密は、光と影があるということです。光(長所)は、植物性油脂が主原料なので不飽和脂肪酸が多く、低価格であること、またバターにはできないことも可能になるということです。副材料や加工方法を変えることで、マーガリンは用途に合わせて作業性を高めたり風味に変化がつけられます。実際クッキー作りでは、マーガリンの方が柔らかく生地作りは簡単でした。

     一方影の部分(短所)は、トランス脂肪酸の心配と、どんなマーガリンでも摂り過ぎは高カロリーになり、生活習慣病の引き金になるということです。わたしたちはパンに塗るマーガリンやバターのような見える油の量は気にしますが、食品に含まれる見えない油のことも考えなくてはいけません。また脂肪酸の種類と性質を知り、どんな油脂をどのくらい摂ったらいいのか、日頃から意識していかなければ健康な生活は維持できません。

  • 2)

    玉造黒門越瓜クッキーの商品開発を通じた、たくさんの人との出会いは、新鮮で新しい発見の連続でした。「ほんまにええ経験してるなぁ。勉強は机の上だけとちゃうもんなぁ」と呟いたおじさんの一言がとても印象に残っています。また学校周辺の歴史の深さを知るにつれ、毎日の登下校が楽しくなりました。

活動写真04