トランス脂肪酸の低減について  
2019年1月
日本マーガリン工業会

 食品中に含有されているトランス脂肪酸とその摂取に関連して、これまでも当工業会は見解を明らかにして参りましたが(注1)、その後、2012年3月には食品安全委員会によって食品に含まれるトランス脂肪酸の食品健康影響評価(リスク評価)(注2)が、また、2018年3月には農林水産省によって平成26・27年度の食品中のトランス脂肪酸の含有実態調査結果が公表されており(注3)、それらを踏まえ、改めて当工業会のトランス脂肪酸の低減の取り組みについて申し述べます。

(1)  食品中のトランス脂肪酸について(注4)、(注5)
脂肪酸には、炭素間の二重結合がない飽和脂肪酸と炭素間の二重結合がある不飽和脂肪酸の2種類があります。さらに、不飽和脂肪酸には、炭素間の二重結合のまわりの構造の違いによってシス型とトランス型があり、このトランス型の二重結合が一つ以上ある不飽和脂肪酸をまとめてトランス脂肪酸と呼んでいます。
 食品中のトランス脂肪酸には、天然の食品に含まれているものと、油脂を加工する過程でできるものがあります。天然の食品中のトランス脂肪酸としては、牛、羊、山羊等反芻動物の肉や乳、その加工品に含まれるものが挙げられます。これは、反芻動物の胃の中に存在する微生物が不飽和脂肪酸中のシス型二重結合の一部をトランス型に変化させることでできます。
 一方、油脂の加工工程でできるトランス脂肪酸としては、部分水素添加油脂(PHOs)に含まれるものが挙げられます。水素添加とは油脂中の不飽和脂肪酸の二重結合に水素を付加し単結合に変換することで、常温で液体の油を半固体や固体の油脂に作り替える技術です。そして、油脂中の不飽和脂肪酸の二重結合の一部を残すように水素添加(部分水素添加)した油脂を部分水素添加油脂と呼びます。部分水素添加油脂中に残る二重結合が水素添加過程でトランス型に変化することで、トランス脂肪酸ができます。なお、二重結合が残らないようほぼ完全に水素添加(完全水素添加)を行ってできる油脂を完全水素添加油脂(極度硬化油脂)と呼びます。この場合は、水素添加を行ってもトランス脂肪酸は生成しません。

(2) トランス脂肪酸の健康への影響(注6)、(注7)、(注8)
 トランス脂肪酸の長年にわたる過剰摂取は、血液中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を増やすだけでなく、HDLコレステロール(善玉コレステロール)を減らし、冠動脈性心疾患のリスクを増加させるという研究結果が報告されています。
 FAO/WHO合同専門家会合の暫定報告書(2010年)では、トランス脂肪酸の摂取量を反芻動物由来のものと油脂の加工過程由来のものを合わせて総エネルギー摂取量の1%未満とする目標値を設定しています。
 そして、欧州食品安全機関(EFSA)の「食品中のトランス脂肪酸のヒトへの健康影響に関する意見書」(2004年)の中で、反芻動物由来と水素添加植物油由来で影響に違いがあるかどうか決定することは不可能である、と述べています(注9)。
 また、天然の食品に含まれているトランス脂肪酸と油脂を加工する工程でできるトランス脂肪酸を区別できる分析方法は、現時点ではありません(注10)。

(3) トランス脂肪酸摂取の現状(注8)
 食品安全委員会の資料によれば、各国のトランス脂肪酸摂取量の平均値は、日本が総エネルギー比で0.31%(2006年及び2008年調査)であるのに対して、米国が1.1%(2009〜2010年調査)、カナダが1.42%(2008年調査)となっていて、WHOの目標値(1%未満)を超えています(注11)。
 そうした中、2015年6月には、米国食品医薬品庁(FDA)は、トランス脂肪酸が多く含まれる部分水素添加油脂(PHOs)を「従来から使われており安全が確保されている物質(GRAS)」ではないとして、2018年6月から適用を開始しました(注12)。
 2012年3月に食品安全委員会が取りまとめた食品健康影響評価においては、「日本人の大多数がWHOの勧告(目標)基準であるエネルギー比1%未満であり、また、健康への影響を評価できるレベルを下回っていることから、通常の生活では健康への影響は小さいと考えられる」と評価しています(注13)。

(4) トランス脂肪酸の低減に向けて(注3)、(注14)、(注15)
 私たち日本マーガリン工業会会員企業は、油脂中に含まれるトランス脂肪酸の低減に取り組んで参りました。その結果、製品の品質を保ちつつ、エステル交換や分別の技術を活用するなどして部分水素添加油脂をできる限り使わないことによって、トランス脂肪酸を低減することに成功しています。これは、下表に示した国が平成18・19年度と平成26・27年度に行った調査結果からも明らかです。また、この平成26・27年度の調査結果の数値は平成18・19年度に行ったバターの調査結果の数値も下回っています。これからも私たちは皆様の豊かな食生活のために、安全、安心な製品づくりに取り組んで参ります。

表.国によるトランス脂肪酸含有量の調査結果
平成18・19年度
中央値(g/食品100g)
平成26・27年度
中央値(g/食品100g)
マーガリン 20点 8.7 46点 0.99
ファットスプレッド 14点 6.1 33点 0.69
ショートニング 10点 12 24点 1.0
バター 13点 1.9 - -
(平成18・19年度調査結果及び平成26・27年度調査結果より。なお、バターは平成26・27年度は調査対象外)
〔参考〕バランスの良い食生活 〜 トランス脂肪酸の低減化とともに推進しています。
 脂質は、ヒトの重要なエネルギー源であり、ビタミンAやビタミンEなどの吸収を助ける働きを持つなど、重要な栄養成分の一つです。また、脂質の構成要素である脂肪酸のうち、必須脂肪酸(リノール酸やα-リノレン酸など)は生命の維持に不可欠であり、体内で作ることができないため、食事からとる必要があります。 健康を保つためには、いろいろな食品をバランスよく食べることが大切です。「食事バランスガイド」については、工業会のHP(http://www.j-margarine.com/balance/index.html)でご覧ください。


(参考文献等:詳しくは以下のHP等をご覧ください。)
(注1) 「日本マーガリン工業会の見解」〜「トランス脂肪酸について」
http://www.j-margarine.com/newslist/news8.html(2005.11)
http://www.j-margarine.com/newslist/news15.html(2007.7)
(注2) 「新開発食品評価書 食品に含まれるトランス脂肪酸」
 〜「トランス脂肪酸に係る食品健康影響評価」(食品安全委員会、2012.3)
http://www.fsc.go.jp/sonota/trans_fat/iinkai422_trans-sibosan_hyoka.pdf
(注3) 「平成26・27年度調査結果(穀類加工品、乳類、油脂類、菓子類、嗜好飲料類、調味料・香辛料類、調理加工食品)」(農林水産省、2018.3)
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_kihon/content/h2627_transfat.html
(注4) 「すぐにわかるトランス脂肪酸」(農林水産省、2018.11.28更新)
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_wakaru/index.html
(注5) 「食品に含まれるトランス脂肪酸の由来」(農林水産省、2018.11.28更新)
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_kihon/trans_katei.html
(注6) 「トランス脂肪酸の摂取と健康への影響」(農林水産省、2015.6.24更新)
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_eikyou/trans_eikyou.html
(注7) 「トランス脂肪酸に関する国際機関の取組」(農林水産省、2018.11.28更新)
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_kokusai/index.html
(注8) 「食品の安全に関するリスクプロファイルシート(化学物質):トランス脂肪酸」(農林水産省、2017.3.24更新)
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/pdf/170324_tfa.pdf
(注9) 「欧州食品安全機関のトランス脂肪酸に関する科学技術的助言」(EFSA Supporting Publications、2018.6)
https://www.efsa.europa.eu/en/supporting/pub/en-1433
(注10) 「欧州食品安全機関におけるトランス脂肪酸に関するレビュー」(the EFSA Journal、2004.8)
https://www.efsa.europa.eu/en/press/news/040831 
or the EFSA Journal (2004) 81, 1-49 “ Trans fatty acids: EFSA Panel reviews dietary intakes and health effects ”
https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/81) 
(注11) 「脂質の摂取 〜トランス脂肪酸を理解するために〜」(食品安全委員会、2018.5)
http://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20180524ik1
(注12) 「米国食品医薬品庁の部分水素添加油脂に関する最終決定」(FDA、2018.5.18更新)
https://www.fda.gov/Food/IngredientsPackagingLabeling/FoodAdditivesIngredients/ucm449162.htm “Final Determination Regarding Partially Hydrogenated Oils (Removing Trans Fat) ”
(注13) 「食品に含まれるトランス脂肪酸の食品健康影響評価の状況について」(食品安全委員会、2015.6.19更新)
http://www.fsc.go.jp/osirase/trans_fat.html
(注14) 「食品中の脂質とトランス脂肪酸の濃度」(農林水産省、2018.3)
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_kihon/content.html
(注15) 「食品中のトランス脂肪酸の低減」(農林水産省、2018.3.30更新)
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_torikumi/red.html
なお、トランス脂肪酸の規制に関する国の考え方については、以下をご覧ください。
(参議院、2016.12)
  http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/192/syup/s192047.pdf
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/192/toup/t192047.pdf
また、トランス脂肪酸の情報開示に関する指針については、以下をご覧ください。
(消費者庁、2011.2)
  http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/health_promotion/trans_fatty_acid/


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